久保加織 氏 ご講演要旨
久保加織氏は、「滋賀の伝統食の伝承と普及の取り組み」を食品学的な分析をもとに話されました。
滋賀の食を育み、支えてきたものは、「琵琶湖の恵み」・「気候」・「人々の知恵」だと考えている。
一般に、伝統食は塩分が高い傾向にあるが、上手に組み合わせて栄養バランスのとれた献立にすることができる。厚生労働省と農林水産省は、「何を」「どのくらい」食べたらよいかをわかりやすく示すために「食事バランスガイド」を示している。
滋賀の食事文化研究会では、食事バランスガイドのコマに示された料理として滋賀の伝統的な料理を当てはめ、栄養バランスの取れた食生活を送るためのガイドになるような冊子を作成した。滋賀の風土にあった、先人の知恵のつまった滋賀の伝統的な料理をこれからも活用していきたい。
また、これまで、滋賀の伝統食の中でも代表的なふなずしを今後も伝承するために、ふながどのように変化してふなずしになるのかを成分分析によって明らかにしてきたので、その一部を紹介する。
ふなずしの香りは数種類の酸とエステル、アルデヒド、ケトンが合わさったもの。ふなずしの摂食経験の少ない人は、独特のにおいが強くないふなずしを好むが、何度もふなずしを食べた経験がある人はその好みに個人差が大きく出る。ふなずしの喫食経験がない人には、ふなずしを繰り返し食べて新奇性恐怖(初めて食べたり飲んだりするものに恐怖を感じること)をなくすことが嗜好性向上につながる。特に、ふなずしに対する嗜好性がそれほど高くない人には、ふなずしの栄養価や機能性、食文化的な価値等を伝えることも嗜好性向上のためには効果的であることがわかった。
平成25年12月4日、「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録された。和食のもつ ①多様で新鮮な食材と素材の味わいを活用 ②バランスがよく、健康的な食生活 ③自然の美しさの表現 ④年中行事との関わりがある といったことが評価さた。滋賀の食事文化研究会での活動は、今回の登録に向けた提案書の具体例の一部として示されている。
「これからも滋賀の価値ある伝統的な食事を継承していくために様々な活動をしていきたいと考えている。」と結ばれました。