榎 和子 氏 ご講演要旨

 

  榎 和子氏は、「滋賀の伝統食にみる技・知恵・こころ」を話されました。


「クイジはすんだか」というこの言葉には、食事文化を伝承してきた滋賀の人々の暮らしや想いが伝わってくる。クイジとは滋賀の古い言葉で食事のこと。


滋賀の伝統食について事例紹介


イ 「なれずし」「塩きりなすと大豆の煮もの」「えび豆」

  長い歴史を持ち、高度な加工技術で作られ、おいしく栄養性の向上が獲得された伝統食の例。いずれも行事の中で伝承され、今も家庭で作られている。


ロ 「打ち豆汁」「くるみ」「納豆餅」「豆腐田楽」

   一つの食材を多様に利用して使い切る工夫する例を「大豆」でみる。


ハ 「黄飯」「きびの赤飯」「日野菜漬け」「下田漬け」

   色もご馳走を感じる伝統食。巧みな色彩管理の知恵をみることができる。


ニ 「じゅんじゅん」「お力落とし」「泥亀汁」

    ユニークな料理のネーミングも楽しい。


 このように伝統食が豊かに伝えられてきた背景には、 1.地産地消の食であった。 2.人々が持つ高い調理・加工技術で日常食が作られ、食生活が営まれてきた。3.食生活を一年の食暦の中で管理する優れたマネージメント力、祭りなどの行事を皆で企画・運営する力とそれを支えるコミュニケーション力があったことなどが挙げられる。


  平成10619日には「滋賀の食文化財(湖魚のなれずし・湖魚の佃煮・日野菜漬・丁稚羊羹・アメノイオ御飯)」が滋賀県選択無形民俗文化財として滋賀県教育委員会により選択された。食習俗の記録と保存のための事業が行われ、その後も伝統食についての学習と普及ための大きな力となっている。

 

「伝統食を新しい知恵や技の助けを借りて受け継ぎ次の世代につなげていきたい。」と結ばれました。